可愛らしいパステルカラー?
シックなコンビネーション?
リボンはどんな形に結ぼうかな…
SWEET
いかにも若い女性が好みそうな外観のショップは、ここ一ヶ月ひときわ華やかに賑わっている。
甘い企みを心に秘めた女の子たちの誰しもが少し頬を染め、真剣にラッピング用の小物を選んでいる。
と、店の奥でこの雰囲気と反する殺伐としたオーラを放つ小柄な女の子が店員につかみかからんとしていた…。
「だからっ!華やかで、でも下品じゃなくて。落ち着いていて、でもジジくさくなくて!
あとこれが一番重要なんだけど…失敗無く簡単に包めるヤツないっ!?」
…言いたいことが支離滅裂である…
「…つまりはお客様が贈り物をなさるのは、若くてでも落ち着いた雰囲気の方、ということですね?」
風変わりな客に動ずることもなく、ベテランと思われる店員はほほえみながら言った。
すると先ほどまでの勢いは何処へ行ったのやら、小柄な少女はみるみる顔を真っ赤にして消え入りそうな声で言った。
「…そうなの。あたしと同じ高1なんだけど、すっごく頭良くて冷静で。でも冷たいとかじゃなくてっ!…なんて言ったらいいか…春の日の日向みたいにあった
かい人なの…。だから…」
自分の言葉で一生懸命彼のことを伝えようとする少女に店員はくすぐったいようなほほえましさを感じた。
「わかりました。じゃあ、そのイメージに合った魅力的な物をお探ししましょう。…できるだけ簡単なラッピングもお教えしますわ。」
少しだけ怒った顔、恥ずかしげな顔、最後に少女は満面の笑みを見せてくれた。
「ありがとうっ!…ほんとはね。去年渡せなかったから、その分も出来るだけがんばってあげたいんだぁ…ほんと、形とか悪いんだけど…」
そう言うと
「エヘヘ…」と笑った。
(いい子だわ…)
こんなに可愛らしい子に思いを寄せられる少女の恋人もまた、素敵な少年なのだろう。
VALENTINE DAY…
甘い甘い香りのする小さな包み。ほんの少しリボンが曲がっている。
でも彼は思った。
これは俺達にヤキモチを妬いた天使のイタズラなんだ、と…。
おわり