『キャンディ』 午後になって少しだけ出てきた風が窓から入り 柔らかい前髪を揺らす。 初夏というにはあまりにも本格的な暑さに、 さすがのいるかもバテ気味だった。 しかも今は役員会議の最中である。 自然と机と顔がくっついてしまう。 「…と言うわけで…いるかっ!」 会議中の春海の叱咤の声も、この暑さ、眠気、空腹の三重苦の前では効果なんてない。 「だってさー、暑いし、お腹空いたし〜!」 会議中であることなど全く気にしないいるかが言った。 「ったく…もうじき終わるから、これでも食っとけ。」 そう言うと春海はいるかの前に小さな包みを2つ置いた。そして会議に戻る。 (のど飴…?) 机に頬を乗せながら、いるかは一気に2つ口の中にほおり込んだ。 「春海、喉痛いの?」 会議が終わり、陽の落ちかけた帰り道。ふと思いだして聞いた。 「ん?あぁ…夕べエアコン付けたまま寝てしまってね…」 そういえば朝の春海の声は少し掠れていた。 「風邪引いたの?」 心配そうにいるかが言う。 「いや。喉以外はなんともないよ。…でも最後ののど飴お前に食われちまったしなぁ…」 からかうような春海の言葉に、隣を歩くいるかの足が止まる。 「…いるか?」 数歩先で気付いた春海が振り返る。 「…ごめん!ちょっと待ってて!」 と言うや否や、今来た道を走って戻っていった。 「少しからかいすぎたかな…」 そんなつもりは全然ないのに、どうしてもからかってしまう。 怒らせたい訳ではないのに、真っ赤になって必死になるお前は見てみたい… (困った性格だ…) 自分自身に苦笑いしていると、もの凄いスピードで走ってきたいるかが目の前で止まった。 「っ…ハァ…これ…ハァ…」 肩で息をつくいるかが差し出したもの、それは… 『いちごみるく』 その袋を凝視する春海にいるかが言った。 「そこの…お店のおばちゃんに…のど飴はないからって言われて…」 …だからって『いちごみるく』って… 呆れながらも…自分を気遣ってくれたいるかに愛しさを覚える。だが… 「これって…すげー甘いんだろ?俺…あんまり甘いの苦手…」 やっぱりからかってしまう。 するとほら… 「なんだとーっ!せっかく買ってきたのにっ。飴なんだから同じだろっ?もういいっ!あたしが食べるっ」 いつも通り、真っ赤になって拗ねる。おかしくて、可愛くてついエスカレートしてしまう。 「おい…いらねーなんていってないだろ?全部食うなよっ!」 言ってるそばから小さい『いちごみるく』は全ているかの口の中。 ったく…色気ねぇなぁ…リスみたいになってるし。 「ふぇぇったぃ、ふぁふぇふぁい(ぜーったい、あげない)」 『いちごみるく』を満杯に口に詰めたいるかの耳元に口を寄せて一瞬だけ息を吹く。 「ふぁっ!?」 「……」 「…甘ぇ…」 「!?」 一つだけ奪い取った『いちごみるく』は思った通り甘かった。 でも… 嫌いじゃないかな… 終わり |
さちえさんに「いるかちゃん応援部」一周年の記念に 甘ーいお話をいただいちゃいました♪ リスのようにほほを膨らませるいるかちゃんが もう、かわいくってかわいくって。 昔飼っていたハムスターを思い出しました(笑) 相変わらず賢い(策士とも言う)春海は まったくす・ば・ら・し・い方法で キャンディをいただいたのですね。 (一歩間違えればのどに詰まらせるよ…) 健気でやさしくて でもねぼすけであんまり色気はなくて。 だけどいるかちゃんって本当にかわいいなぁ。 少し子供っぽいところも 春海にしたらたまらなく愛しいんだろうな♪ いちごみるく、ってまさにいるかちゃんらしいキャンディですよね。 甘くってすぐ溶けて、懐かしい。 壁紙はそんないちごみるくをイメージして ロゴも作ってみました。 今度どこかで見つけたら 私も買ってみようかな…… さちえさん、かわいらしいお話をありがとうございました♪ 水無瀬 |