あきこさま作







ラヴ コネクション





『うん!解った!有難う!助かった!じゃ又、明日ね〜』

――――ふう、助かった…

宿題をやっていたいるかはどーしても分からない所があり、

春海に電話で教えてもらっていたのだ。

♪フフフフ〜

これで宿題は片付くと、教科書を片手にいるかは鼻歌を歌っていた。

すると…

「相変わらず、仲が良いのねぇ〜春海君と♪」

声の主は、母、葵だった。

葵は、知人からもらったワインを飲んでいて、少し酔っているようだ。

今夜は父、鉄之介は遅いらしい…

「なぁに、娘をからかってぇ〜」

「だってぇ〜若いっていいなぁ〜って思っちゃうじゃないぃ〜」

ほろ酔い気分でかなり気分が良いらしい…

「でもぅ〜春海君って、いるかには勿体ないくらいの人だけど…」

「?だけど…何?」

「鉄之介さんには負けるわね!」

鉄之介さん…父ちゃん…が!?

「あぁぁ〜いるかぁ、今『!?』って思ったでしょ、」

いるかは、教科書をリビングのテーブルに置き、母と向かい合ってるソファーに座っ
た。

「あの父ちゃんがぁ〜て、なんか、笑えるんだけど…」

葵はワインを手酌しながら…2本目らしい…

「あの頃の鉄之介さんは…もう〜凄かったわぁ〜」

「あの頃!?」

「まぁ…ちょっと、聞きなさい、聞かせてあげるからぁ…」

「はぁ…」―――フゥ…

いるかはため息をついたが…このほろ酔いの葵の話をしばらく聞いてあげる事にし
た。





「あの頃はとにかく楽しかったわ!毎日、毎夜、とにかく遊んでたわ!何もかも新鮮
で!」

「あの頃!?」

「ほらぁ〜私の実家ってさぁ、堅苦しい家じゃない〜華族の血をひくとかなんとかっ
てぇ」

そうなのだ…葵の実家は、元華族とかで、奈良では結構、名の知れた、旧
家なのだ…

「幼稚園から、地元の良家のお嬢様ばかりいく学校に入れられて…とにかく息がつま
りそうだったのよぉ、で…短大だけは自由にして欲しくて、東京の短大に入ったのよ
!」

「よく…じいちゃんとばぁちゃんが許してくれたよね。」

「そりゃぁ、大変だったわよ、でも、一度決めたら頑固に意志を通す娘だって分かっ
てたからねぇ〜家出だってしかねないし、なんせ、あんたの母親だし、で、何とかか
んとか許してくれたのよ、東京に姉さんも嫁いでたから、まっそれで…」

「姉さんって、かもめのかぁちゃんか…」

「そんでまぁ…そんな堅苦しい家から開放されて、毎日遊んでた訳よ…」





―――1960年代後半に話はさかのぼった―――



「葵!今夜、踊りにいかない?銀座に新しいディスコが出来たんだって!ミラーボー
ルが凄いらしいよ」

「へぇー面白そう〜」

東京に出てきてすでに1年4ヶ月あまり、19歳の葵はすでに東京に溶け込んでい
た。

葵の通う短大は、奈良で通っていた学校と一緒で、お嬢様学校、親元を離れている葵
は、寮に入っていた。寮の規律はもちろん厳しく、門限は夜の8時だった。

どうやって遊びに出てたかと云うと…

寮を囲む3メートルはあると思われる塀を協力し合い、突破するのだ、方法は色々…

ちなみに葵は友人の背中に乗り、その塀をよじ登ってた。

その夜も、いつもの様に塀をよじ登り葵は友人の小百合とディスコに来た。

パッと見、旧家のお嬢様とはどーしても見えない葵と小百合はは踊っていた。

「なんか、この店、いい曲ばかり流してるし、良いんじゃなぁい〜」

小百合は踊りながら上機嫌だ。

店の中は洋楽ポップが流れていて、店内は混んでいた。

すると…

「ねぇ〜彼女達、一緒に踊んないぃ〜」

ナンパだ…さすがにナンパには慣れている葵と小百合だった。

ナンパ相手は23〜26歳くらいの男2人組みだった。

といっても誘いをかけてくるのは1人だけで、もう1人の方は黙ってこっちを見てる
だけだった。

ナンパに慣れてる小百合は、声をかけてきた男の手を取り、葵に、

「ちょっと踊ってくるわ。」

その場に残された、葵ともう一人の男…

ちょうどの葵の好きな曲が流れてきた。

(踊りたいなぁ…)

「私達も踊りません?」

葵はもう一人の男を誘った。この男、よく見ると悪くないかも…

男は、にこやかに微笑み、葵の手を取った。



その男は踊りが上手かった。

流れている曲は【トゥナイト】葵が好きなミュージカル映画【ウェストサイド物語】
の曲だ。

映画の中で、マリアとトニーがダンパをする場面を思い出しながら葵は、その男と
踊っていた。

「この曲を聴くと【ウェストサイド物語】を思い出します。」

「あぁ、私も、その映画、好きなんです。」

「僕はその映画は観た事がないんです。ミュージカルでしか…」

「私もミュージカルの方も観てみたいんですが…海外まで行かないと…どちらの国で
観たんですの?」

「ニューヨークで、先月迄、そっちに居たもので…」

踊りながら2人は話していた。

「ご旅行で?それとも留学?お仕事?」

「仕事です。」

海外で仕事をしてるとは全然思えないような人なのに、意外だな、と葵は思った。

ただ、身のこなし方を見ても、育ちは悪くないんだろうなぁ…とも思った。

ダンスも上手いし、ただのナンパ男ではないな!とも思った。(実際ナンパしてきた
のは彼ではないが)

…顔も悪くないし…





曲も終わり葵がふと周りを見渡すと小百合がいなかった。

―――またか…

珍しい事でもなかった、小百合はナンパ男でも気が合うとそのまま消えて行く。

「坂井の奴…何処行ったんだろ、…たっく、しょうがない奴だな」

友人が消え、その男はため息をついていた。

葵が自分の腕の時計をみると、23:00をまわっていた。

〜そろそろ、寮に帰らないと…

葵はいくら寮を抜け出してまで遊んででも、午前様にだけはならないように心がけて
いた。

自分を信用して、東京に出してくれた、両親に悪いと思ってるからだ…

「あっ、では私、帰ります。」

その男に挨拶をして,葵はその場を去ろうとした。

「では、送ります。」

「いえ、すぐハイヤーに乗りますし、」

「では、ハイヤー迄、送ります。こんなに遅く女性を一人で夜道に出す事を黙って見
過ごすなんて…日本男子の名に恥じます。」

…にっぽんだんし!

この時代に【日本男子】の名を語る男が居たとは…葵は【日本男子】に送ってもらう
事にした。



店を出てハイヤーがつかまりそうな場所まで2人は並んで歩いていた。

その晩の夜の空は、東京には珍しく、星が沢山見えた。

「じゃ、ニューヨークの前はイギリスに居たんですか?」

「ええ、仕事に就いて3年、短期間ずつですが、海外に出張になる事が多くて」

「ご職業はなんですの…と、えっと…そういえば私、お名前を聞いてなかったわ!」

葵は、今更って感じで慌ててしまった。

その男は軽く微笑み、

「如月 鉄之介といいます。年は25、外務省に勤めています。」

「私は、○○ 葵と申します。短大の2年で、19です。」

葵は慌てて答えた。

「葵さんって東京の人ではありませんよね。京都…奈良の方かな?」

「分かります?実家が奈良です。1発で、出身地当てた方は初めて、」

「如月さんは…?東京の人にも見えるけど…」

「倉鹿です。ご存知ですか?」

「話に聞いた事があります。歴史が古い、城下町ですよね。」

「古い城下町ですが…良い所です。あそこだけは時間が止まってるような…日本が、
世界がどんどん変わっていこうとも、倉鹿だけは変わらない…良い所で、育ったと…
誇りに思っています。」

遠い故郷を思い出すように話す鉄之介に、葵は今まで、異性に感じた事がない、とき
めきを感じた。

(私…どうしちゃたんだろう…)

しばらく歩くと、ハイヤーがつかまりそうな所に出て、鉄之介はハイヤーをつかまえ
てくれた。

「じゃぁ…」

葵は軽く会釈して、ハイヤーに乗り込んだ。本当はもう少し話をして居たいけど…

なんか、今日、会ったばかりの人なのに、葵は妙に鉄之介が気になった…

得に理由もない。葵はお嬢様として育ったせいか、外務省に勤めているとか、そうい
う事はどうでもよかった。

でも、まぁ、しょうがないし…

―――――すると、突然、鉄之介は葵の隣に乗り込んだ!

「鉄之介さん―――?」

「寮の前迄送ります。葵さんダンス踊って疲れていると思いますし…それに…もう少
し一緒にいたいんです!」

鉄之介の以外な言葉に葵は、顔が赤くなった。鉄之介も顔が赤くなっているようだっ
た。車内は暗いのに、鉄之介の顔が赤いのだけは分かってしまった。…寮迄の間、2
人はほとんど口を聞かず過ごしてしまった。

(このまま…時間が止まってしまえばいい…)

―――寮の目前まで来ると葵はハイヤーを停めた。さすがに寮の前迄はまずかった。
寮を抜け出している訳だから堂々と門まで、ハイヤーで行く訳にはいかない。

「ここまで送って頂き有難うございました。」

葵はハイヤー代を鉄之介に渡そうとしたが、受け取ってはくれない。

「良いですよ。自分が送りたくて送ってきたんですから、」

「困ります。自分の分は出すようにと育てられてきましたから。」

すると鉄之介はお金を受け取り、

「じゃ葵さん…このお金で今度お食事にでもいきませんか?」

鉄之介の言葉に葵は笑顔で、答えた。



その夜は眠れなかった。今までナンパなんてよくあった。

男とダンスだってよく踊った。送ってくれる男だって沢山居た。

大体、その手の男は下心がある。しかし…葵に襲いかかろうとするものならば…

幼少の頃から習っていた、柔道の技で、自分の身は守っていた。

でも、なんか…如月 鉄之介は、そんな男達と違う感じだ。

遊び慣れた感じでもないし、ただの真面目な男ってそんな感じでもない…

なんだろう…眠れない…

目を閉じると鉄之介の顔が浮かんできた。

…早く、また、逢いたいな…

葵は鉄之介との今夜の会話を思い出していた。



眠れない夜が明け、葵は朝帰りの小百合と短大のキャンパスに居た。

「いいなぁ〜私がそっちの男にすれば良かったぁ〜」

昨夜の事を話すと小百合は羨ましそうに云った。

「でっいつデートするの?」

「そんな、分からないわよ。寮の電話番号は教えたけど…」

――――掛かってこないかもしれないし…

「でも、初めてじゃない?葵が電話番号教えるなんて、今までどんなにしつこくても
教えなかったじゃない!いくら夜遊びしてるっていっても、軽はずみな事はしない
し、そういう所はやっぱりお嬢様だなぁ〜って関心してたのよ!」

「掛かってくれば、良いけどね」

「大丈夫!明日か、明後日には掛かってくるわ!」

(だと…いいけどなぁ)

小百合の予想を反して鉄之介の電話は早速、その夜に掛かってきた。

そして週末、食事をする事になった。

そうなると…もう後はなるようにしかならない…

その後2人は、付き合うようになったのだ…





「それで…まぁ、短大を卒業した3月に、すぐ鉄之介さんと結婚したのよ。」

――――再び、現在、東京、六段の如月邸、リビング―――

「えっ!早くない!知り合って、えーと…6ヶ月くらいじゃない!」

すると…葵はにんまり微笑み…

「だって、あんたが出来ちゃたんだから、しょうがないじゃない!」

葵は20歳の時、いるかを8月に生んでいる。

…葵の誕生日は3月だ…

ええっと…そうなると…

「かぁちゃん…妊娠5ヶ月の時とうちゃんと結婚してるのかよ!」

葵は再びにんまり笑い…

「いるかもそういう事が分かるようになったのね〜まぁ、あんたと春海君はまだ高校
生なんだから、気をつけなさいよ!」

「何!言ってるんだよ!かぁちゃん!」

いるかは思いっきりユデタコになった!

「で…初めてお食事した時に〜鉄之介さんってば!」

……葵の話はまだまだ続いた…





次の日、職員室に用があった春海は数学の教師に叱られてるいるかの姿を見た。

いるかはちょっと落ち込んだような感じで職員室を出てきた。

先に職員室を出ていた春海が、いるかを待っていた。

「また、居眠りでもしてたのか?早弁してるの見つかったとか?」

「違うよ!宿題やって来なかったんだよ!っと…」

――――あっ!言うんじゃなかったっているかは思った!でも言ってしまった…

「いるか…昨日の夜、俺、1時間近くかけて、電話で数学の宿題…教えたような気が

るんだけど…」

やばぃぃぃ…

「ごめん!春海!」

そう言うといるかはそそくさと逃げてった…

「待て!いるか!廊下を走るな!」

春海はいるかを追いかけていった。




Fin


あんまりいるかちゃんは、母親の実家を知らないってことで…

葵さんの旧姓も考えたんですが…京極とか三条とか…
やっぱり
葵さんと云うキャラは昔からのキャラで…勝手に苗字をつけるのは気がひけてしまい…
芹沢かな?とも思ったのですが…そうするとうーん…悩んだあげく…○○になりました。
葵さんと鉄之介さんが出会った頃はすでにディスコなるものはあったみたいで…
後で調べて安心しました。
しかし二次小説面白いですね。話が浮かべば早い早い〜
しかし今は脳みそ空っぽになってしまってて、話が浮かびません。
いるヨロを再び読み直して少しトリップしてきます。



あきこさんの第二作です♪
なかなか親の馴れ初めって恥ずかしいものですよね〜
いるかちゃんもあまり知らなかったのかしら。
酔った勢いとはいえ、自分のダンナ様が一番♪な葵さん、かわいいです!
いくつになってもこうでありたいもの♪

一時間かけて教えた努力が報われなかった春海君は若干気の毒ですが
いるかちゃんはめったにない機会だったろうと思うので
とことん葵さんに付き合ったのでしょうね。
一緒に飲んでたりして(笑)
あ、そうか。
それで寝ちゃったのか(笑)

ん〜なんだか私のほうが照れてしまうお話でした♪
葵さんといるかちゃんって
やっぱりよく似てると思うので
いるかちゃんも将来はこんな感じなのかな?
それに
自分の父に似た人を夫に選ぶとはよく言われますから
春海と鉄之介さんは結構共通点があるような気もします。

外面がよくて手が早そうな感じとか(笑)

60年代をイメージして
背景はややサイケデリック(笑)な感じで。
ディスコって懐かしい響きですよね〜
今ならさしずめクラブってところでしょうか。

あきこさんてれてれっなお話をありがとうございました♪

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