青い空さま作











 見 草








『一色に太宰!!  なんだこいつは』

嵐のように、桜吹雪の舞い散る中…






あの日から、一年がたった。

今年もこの桜は見事な花を咲かせ、道行く者を魅了する。





一年前、この街に来た頃は毎日、早く東京に帰りたくてそればかり考えていた。
『どうやったら帰れるだろう』
その考えで頭がいっぱいだった。
今でも、東京への思いはある。でも、その思いよりも強く、この街に引かれている。


この街に来ていろいろなことがあった。
友達も出来た。
一つのことに打ち込むことも、出来るようになった。



なんてこの街には桜が似合うのだろう。
淡い色の霞が倉鹿の街を彩り、風が吹く度に舞い落ちる花びらが鹿々川の水面に浮か
ぶ。
遠い昔の面影を残す街並は、ごく自然に季節の移ろいを伝えてくれる。



東京に帰りたくない。今は、一日でも長くこの時が続けばいいと思っている。


「いるか…
こんなところにいたのか?」

「春海…」





春海は、いるかの視線を追い、桜を見上げ、

「満開だな… ちょうど一年になるんだな、お前がこの街に来て…」

「…うん」



一年前、いるかに出会う前の俺は、退屈な毎日を送っていた。
すべてのことが順調で、思い通りになる。
そうなるように努力をしなかった訳ではないが、だからといって、思い悩んだことも
ない。


はじめて、だった。
自分に突っかかり、真正面から勝負を挑んできた者は…
真直ぐな瞳で、怯まず、どんなことにでも真剣になる。

はじめて、だった。
それは強烈な印象で、俺の中に入り、鮮やかな色彩を持つ。
気がつけばいつも目で追っていた。




「春海?」

しばらく桜に見とれていた俺を見上げるように、小柄ないるかは問いかける。


「あぁ、すまない。
もう、会議がはじまるのに、お前が見当たらないから探しにきたんだ」

「あっ、忘れてた。ごめん!」

「お前な、もう少し自覚しろよ」



「あんまりにも桜が綺麗だったから…
倉鹿の街って、桜が似合うなって思ってたんだ…
桜だけじゃなくて、いろんなものがあるままの姿であるっていうのかな?
なんかそんなのいいなって…」





背の高い春海を見上げると、桜が彼を彩り、
サラサラの癖のない髪を風が揺らし、花びらが舞い落ちる。


見上げる二人の上に等しく、はらはらと弧を描きながら。



「行こう。会議の後に剣道部のミーティングもあるんだぜ」

「あっ、待ってよ。春海」
いつまでも、このまま、いれたらいいのに…




青い空さんからいるかちゃん応援部二周年記念にいただいちゃいました♪

タイトルの「夢見草」すてきな名前ですよね。
それについての青い空さんのコメントを引用させていただきます〜

『夢見草』って桜のことなんですって。
昔、(高校ぐらいだったかな?)友達に聞いたことがあって、
なんとなく気に入って使ってみました。


倉鹿と桜はやっぱり似合いますよね〜
で、桜を見上げるいるかちゃんと春海も絵になりますよね〜

一年、二年と過ぎていく時間を振り返り思うのは
同じでいることはけっこう努力がいるのだなということ。

変わっていくのがあたりまえの中で
同じであり続けるということもまた
大変なのだなと思ったりした二周年です。

壁紙は満開の桜をイメージしました。
画面を埋め尽くす桜に、春爛漫の倉鹿を感じてくださいませ♪

青い空さん通算10作目!となるすてきな作品をありがとうございました〜

2005年06月16日

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