馨子さま作
里見学習院殺人事件
【@白い悪魔が来たりて】
「おはよー」
「おはよー」
冬休みを間近にひかえ少々浮かれ気味ではあるが、いつもと変わらない里見学習院の登校風景。
そんな、様子を春海は生徒会室の窓から眺めていた。
「お・は・よ・う!! 春海」
弾けるような笑顔とともに、いるかが生徒会室のドアを開けて飛び込んできた。
「ああ、おはよう、いるか。早いな」
「もう、春海までそー言う。み〜んなあたしが早く登校すると口をそろえて言うんだもん、嫌になっちゃう」
「遅刻、早弁がお前の代名詞だからなぁ」
「もう、怒るよ!! 春海」
「ははは・・・、ごめんって。最近まじめに仕事してくれるんで会長の俺としては助かってるよ、副会長殿」
「最近は余計」
「わかった、わかった」
「おっ、早いな二人とも。何だぁ、朝っぱらから夫婦喧嘩か?」
「巧巳!! もう、そんなんじゃないったら」
春海は、そんな巧巳といるかのやりとりをおかしそうに眺めていた。
が、朝から言い知れぬ胸騒ぎを感じて、心が落ち着かない。
だが、全メンバーがそろうと、無理やりその不安を押しやるように、春海はミーティング開始の音頭を取った。
新学年となり、旧生徒会は解散、新メンバーが選出された。
とはいっても、曽我部以外卒業する者のなかった旧メンバーは、曽我部に変わって新一年生が一人選出された以外はそのまま持ち上がりといった格好になった。
変わりばえのしないメンバーで行われたミーティングは、冬休みに向かっての注意事項と各クラブへの伝達事項等々30分程度で終わり、放課後再度集合を確認した後、メンバー達は、各自教室に引き上げ始めた。
「いるか、ちょっといいか?」
春海は、いるかを呼び止める。
「ん、何?」
「ちょっと見てほしいものがあるんだけど」
春海は、一枚の紙切れをいるかに差出す。
「今朝、このドアに挟むように置いてあったんだ」と生徒会室のドアを指差した。
「手紙? 意見書か何か?」
「ん〜、俺も最初はそう思ったんだけど、ちょっと違うみたいなんだよな」
いるかは、いぶかしげに春海から受け取ったその四つ折にしてある紙をひろげた。
今日の放課後、第二体育倉庫まで来てください。
白い悪魔の来る前に・・・
「何?これ」
「だろ?」
「それにこの“白い悪魔”ってなんのことだろ? 気味悪いね」
「ん〜、よくわからないけど、もしかしたら具体的に個人名を書くと差し障りがあるとかさ。とにかく話を聞いてみないと始まらないと思うんだけど、俺、さっき松之助理事長から放課後、理事長室来るように言われてるんだよ」
「松之助じーさんに?」
「ああ、珍しいよな、“理事長室に来い”なんてさ」
「で、悪いけど、お前先に行って、話聞いてくれないか?文面や文字からすると女の子みたいだし、男の俺よりもかえって女のお前の方が話やすいと思うんだ。俺も理事長の話が終わったらすぐに行くからさ」
「うん、いーよ。放課後、第二体育倉庫だね」
「ああ、頼むよ」
キンコーン、カンコーン
「あ、マズイ、予鈴だ。急ごうぜ」
「あ、待ってよ、春海ぃ〜!!」
二人は、慌ててそれぞれの教室に戻っていった。
Fin