馨子さま作






里見学習院人事件







【A前奏曲は血の匂い】



 放課後、春海は理事長室前に来ていた。



「そういえば、俺、理事長室って初めて入るんだよな。ここの理事長って、ほとんど校庭にいるもんな、用件があっても大抵そこで済ますし」



その理事長がわざわざ理事長室に呼び出しをかけたのだ。

何か重大なことがあるのかもしれない。

朝から感じている胸騒ぎのようなこの不安感はそのせいなのか。

春海は、少し緊張した面持ちで理事長室の扉をノックした。



コン、コン

「山本春海です」



すぐに扉が開き、副理事長が出てきた。

松之助理事長の長男である里見竹千代副理事長は、春海であることを確認すると中に入るよう指示した。



「失礼します」



「すまんね、呼び出したりして」

「いえ」



中央には机に鎮座する松之助理事長、そして、今しがた春海を案内した副理事長が松之介理事長の隣に位置した。

そして、右側には私学連会長の姿があった。



「私中連会長!! いえ、今は私学連会長でしたね、失礼しました」

「いや、いいんだよ、山本君。久しぶりだねぇ、元気そうでなにより。ところで、如月君は元気かな?」



「はい、ご無沙汰しております。いるか・・いえ、如月さんは元気ですよ、相変わらず」



「ははは・・・そうだねぇ、あの子に元気がなかったら、それこそ天変地異の前触れだ。あはははは・・・」



「私学連会長?」と隣にいた中年の紳士が少し訝しげな表情で声をかける。



「ああ、申し訳ない。ここにいる山本君とは彼が中学生の頃から知っているのでね、つい懐かしくて」



「山本君、紹介しよう。私の隣にいるのは、文部省事務次官の高石氏だ」



「はい、里見の式典等で何度か拝見しておりますので、存じ上げております。いつも里見の発展の為にご尽力賜りありがとうございます」



高校生離れした物言い、そしてこれだけの大人に囲まれたにもかかわらず、誰よりも落ち着き払った態度。

制服を着ていなければ高校生と誰が思うであろうか、高石は、少なからず驚嘆した。



「山本君の噂は耳にしているよ、学習院始まって以来の秀才だとか。将来が楽しみだね、期待してるよ」



「恐れ入ります」春海は軽く頭を下げた。



二人の挨拶が終わったのを見計らい、さらに私学連会長は続けた。



「そして、あちらにいらっしゃるのは、警察庁刑事局長とその秘書の方だ」

私学連会長には正面の、春海には左側に立つ2人の男を紹介した。



「警察庁刑事局長の浅見と申します」

「秘書の武田です」



『警察? 警察の人間がどうしてここに?』

『しかも警視庁ではなく警察庁? なんでまた事務方が・・・?』



“警察”と聞いて、すぐに春海は、里見の生徒になんらか刑事事件に関わるトラブルが発生し、その対処に呼ばれたのだと思った。

だが、それならば警察庁ではなく警視庁もしくは所轄の警察署の人間が来るはずである。

警察庁とは、警察内でも事務関係を司る組織であるからだ。

春海が“事務方”と表現したのはそのためである。



「警察庁の方なのですか? 警視庁ではなく?」

春海は疑問をそのままストレートにぶつけてみた。



突然の質問に少し面食らったような表情をみせた浅見ではあったが、それも一瞬のことですぐに組織のトップに座る者としての余裕のある笑みを浮かべた。



「山本君とおっしゃったかな? 少し警察組織についての知識がおありのようですね。実は私もそこにいる高石もここのOBでしてね、そして、中等部からの悪友同士でもあるんですよ」



「そうなんだよ、山本君」高石が続ける。



「今のところ、この里見にはこれといって問題が生じているというわけではないが、このところの状況を考えると里見もこのまま静観しているというわけにはいかなくてね。だから、母校ということもあって我々が赴いたんだよ」



「と、いいますと?」



「後は私が・・・」武田と名乗る秘書が後をつづけた。



「ここ何年かで若年層が関わった犯罪が急激に増えているのはご存知でしょう?

被害者になるケースももちろんですが、加害者になるケースも確実に増えてきています。しかも年を追うごとに低年齢化してきています。

高校生、中学生、最近では小学生も含まれるようになってきました。

ですが、こういった若年層の犯罪の取り締まりや抑止は、我々警察だけの力では限界があるのです。

子供たちにとって一番関わりが深いのは学校なわけですから、学校の協力がないことには、警察だけでは片手落ちになってしまいます。

そこで、我々警察は青少年を犯罪から守るべく学校との連携を強化しようとしていました。

そんな矢先、ある情報が入ったのです」



武田は、ここで一旦言葉を切り一呼吸おいた。

そして、“ある情報”についての詳細を話し出した。



「先月のことになりますが、新宿にある一軒のスナックが摘発されました。

以前から暴力団の資金源ではないかと警視庁がマークしていたのですが、その摘発の際、一人の少女が保護されました。

彼女は、都内の私立高校の2年生で、夏休み中に家出したらしく、家族が捜索願を出しておりました。

未成年ということもあり警察としても慎重に取り調べを進めていたのですが、どうも彼女の様子がおかしいということで、任意で尿を調べたところ、覚せい剤使用の陽性反応がでました」



「・・・覚せい剤」



「ええ、それもかなり重度の。もしあのまま保護されず、覚せい剤の使用を続けていれば確実にオーバードーズ(薬物過剰摂取)で死んでいたでしょう」



「しかし、一介の高校生がどうやって覚せい剤なんかを入手できたんですか?」



「問題はそこなんです。彼女の話からですとどうも学校内で手に入れたようなんです。

最初、彼女は覚せい剤だと知らずに使用していたみたいですね。

テスト勉強の為の眠気覚ましのようなつもりでね、“徹夜しても平気”というような事を言われて、それで手を出したのが始まりです」



「そのうち禁断症状に陥り止められなくなった、というわけですか?」



「ええ、その上彼女には第2の落とし穴が待っていました」

「第2の落とし穴?」



「そうです。まさしく第2の落とし穴です」



「薬の価格は最初の内は少額だったようです、高校生のお小遣いでも買える位のね。

ですが、禁断症状が進むにしたがって相手は値を吊り上げていったそうです。当然資金の調達は難しくなる。この頃には、母親の財布からいくらか盗んだこともあったようですが、それでも足らない。でどうするか?」



「山本君、女の子が手っ取り早く大金を手に入れられる方法、とくればなんだと思いますか?」



「まさか・・・売春?」



「ええ、残念ながらそのまさかです。

たぶんそこまで引きずり込むのが目的だったのでしょう。

摘発されたスナックはその売春組織の拠点でもあったわけです。

その後も同じようなケースで保護された少女たちがいまして、いずれも薬の入手は校内だと言うのです」



「生徒の中にバイヤーがいるというのですか?」



「いえ、そこまではまだ。彼女達と売人との連絡手段はポケットベルが使われたそうで、電話でのやりとりはあったものの面と向かっての接触はなかったようです。

電話の相手も毎回違ったとも言っていますし・・・」



「ポケットベルですか? あの外出先の人間を呼び出すのに使う・・・」



「ええ、今まではただ単に音だけを鳴らすというものだったんですが、今年になって小さい表示画面のついたものが発売されました。数字でメッセージを伝えることが出来るようになったんです。

とはいっても文字数が限られてますから、せいぜい連絡先の電話番号分くらいしか入力できませんけどね。

ビジネスマンには便利な物ですが、このように犯罪に使われるとは困ったものです」



おもむろに松之助理事長が口を開く。

「山本君、聞いての通りじゃ。聞けばその保護された少女達は、それまで特に素行に問題があったわけでもなく、ごくごく普通の高校生で、中には進学校として名高い学校の生徒もおるようじゃ。

今のところ里見の生徒達は大丈夫のようじゃが、油断はできん。

生徒会長として生徒達の安全に目を光らせてほしい。理事長としても出来る限りのことはするつもりじゃ。」



「はい、分かりました。今日はこの後、生徒会の収集をかけおりますので、そこで今後の対応策を検討したいと思います」



「われわれ警察の方も出来る限り協力いたしますので、なんでもご相談下さい。

“白い悪魔”に魅入られたら最後、その呪縛から逃れるには並大抵のことではありませんから・・・」



「白い悪魔?」



「ええ、覚せい剤や幻覚剤はその殆どが白い結晶ですからね、“白い悪魔”とも呼ばれているんですよ」



“白い悪魔”という武田秘書の言葉を聞いた途端、春海は言い知れぬ不安に襲われた。

虫の知らせとでもいうのだろうか、激しい動悸とともに体中に戦慄が走る。



「いるか!!」

春海は、理事長室から飛び出していった。



一瞬の出来事に理事長室に残された面々はお互いに顔を見合わせた。

が、とりあえず全力疾走する春海を理事長以下、皆必死の形相で追いかけたのだった。



春海は、第二体育倉庫に向かって全力で走っていた。

なぜだかわからないがとにかく胸騒ぎがしてしょうがなかった。



「いるか!!」声にならない声で叫ぶ。



その時だった。



「きゃあぁぁーーーーーーー」



天をも劈くいるかの悲鳴だった。















 PM4時30分。



本来ならこの時刻は、部活動に勤しむ生徒達の活気にあふれている筈だった。

校庭では野球部員たちのボールを打つ軽快な金属バットの音、フォーメーションを確かめるサッカー部員達の声、音楽室では吹奏楽部のチューニング、体育館では、バスケ部員の履くバッシュのキュキュという小気味いい音、スパイクが決まり歓声をあげるバレ―部員達の声、等々。



だが、その日は、いつもの学校の光景ではなかった。

校庭には、けたたましいサイレンの音とともにパトカーが次々と乗り入れられ、赤色灯がうるさいほど回る。

そして、制服、私服警官たちが、一斉に体育館裏の体育倉庫に入っていった。



殺人現場となった第二体育倉庫では、立ち入り禁止の黄色いテープが張られ、見張りの警官が立つ。

刑事達は現場検証、鑑識は指紋の採取、現場のカメラ撮影等、各々の任務を果たしていた。



いるかの悲鳴に真っ先に倉庫内に入ったのは春海だった。

そこで目にしたのは、血まみれに横たわる女生徒とその脇で同じく血まみれになりガタガタと震えているいるかの姿だった。



その後、同じ光景を春海を追ってきた里見松之助理事長以下、里見竹千代副理事長、私学連会長、高石文部事務次官、浅見刑事局長、武田秘書も目の当たりにすることとなる。



そして、生徒会のメンバーも次々に体育倉庫にかけつけた。

倉庫が比較的生徒会室に近いこともあって、放課後のミーティングの為に集まっていたメンバーはいち早く悲鳴に気づいたのである。



春海は、この悲惨な光景から一時もはやくいるかを引き離したかった。

だが、警察の到着をまたずして勝手は出来ないと、その到着まで茫然自失となっているいるかの体を支えながら、冷静に次々と的確な指示を飛ばした。



まず、副理事長には警察と救急車の手配、巧巳には校内にいる全ての者に生徒会の指示があるまでその場で待機するよう全校放送を流させ、加納には事情聴取に使用できるよう空き教室の手配をさせた。



副理事長の連絡を受け、刑事たちが到着、ようやくいるかはその場を離れる許可を得た。

春海は、いるかに運動部員用のシャワーを使うよう勧め、玉子に付き添うよう頼んだ。

そして自身も着替えを済まし、加納が用意した教室へと向かった。



加納が事情聴取用に用意した視聴覚室には、いるかとそれに付き添った玉子を除いて、その場にいた全員の姿があった。



まず、刑事達は簡単に自分達の自己紹介をし、次に現場に居合わせた者達の名前、身分、そして現場に居合わせるまでの経緯の説明を求めた。



だが、さすがに刑事達も関係者の中に警察庁刑事局長の浅見がいることは予想だにしておらず、当然、緊張に声もうわずってしまう。

本庁の刑事とはいえ、警察庁刑事局長といえばその存在は雲の上のそのまた上である。

県警の本部長クラスならいざ知らず、一介の刑事ごときがそうそうに会えるような人物ではないのである。

そんな刑事たちの姿に苦笑しつつも、浅見は、「捜査には捜査のセオリーがある、君達はそのセオリーに従って事に当たりなさい。例外を作る必要はない。」ときっぱりと言った。



そして、春海にその順番が回ってきたとき、扉をノックする音が聞こえた。



コンコン

「犬飼玉子です、入ります。」



そして玉子に支えられるようにして、いるかも入ってきた。

が、その姿を見た瞬間、いつもの彼女を知る誰もが絶句した。



その顔色は、血の気が引いたように青ざめ、いつもは丹を落としたような赤い唇も紫色に変わり、そして、その瞳は何も映していないかのように全く生気を感じさせなかった。

虚ろな表情で、その場に立っているのがやっとといった様子である。



「いるか!!」

春海は即座に立ち上がり、いるかのもとに駆け寄る。



「・・・春海」

小さくつぶやき、いるかは崩れ落ちるように春海の胸に倒れこんだ。

「春海 春海 春海 春海 春海」



ただ「春海」の名を呼びつづけ、泣きじゃくる。

春海は、その小さな体を包むようにして抱きしめた。















少し落ち着いたのを見計らって、春海は、今日は一段と華奢に感じるその肩にそっと腕を回し、支えるようにして、さっきまで自分の腰掛けていた椅子にいるかを座らせた。



事の成り行きにしばしあっけに取られた感の刑事ではあったが、そこは百戦錬磨のたたきあげである、すぐに冷静さを取り戻し、第一発見者であるいるかの事情聴取に入った。



「私はこの事件を担当します警視庁捜査1課の佐伯といいます。まずはあなたのお名前を聞かせていただけますか?」



「如月いるかです。里見学習院高等部の2年です。」

少し涙声で答えた。



「あなたは遺体の第一発見者になるわけですが、なぜあそこに?」

「それは、あの、手紙が・・・・・」



「手紙?」



「あ、そのことは僕から・・」

春海は、いるかを座らせた椅子のすぐ後ろ立ち、支えるように見守っていた。



「君は? えーっと、そういえばまだ名前も訊いていなかったね」



「山本です、山本春海。僕らはこの学校の生徒会のメンバーでして、僕が会長、彼女が副会長をやっております。

彼女の言っていた手紙というのはこれなんですが、今朝、生徒会室のドアに挟まっていました。」

と“白い悪魔”云々の手紙を手渡した。



手紙を受け取った佐伯は、中身をざっと確認し、

「この手紙によって放課後現場にいったわけですね?」

と春海に視線を向けた。



「ええ、僕は、放課後理事長に呼ばれておりましたので、それで彼女に先に行って貰うよう頼んだんです。

もちろん、用件が済んだら僕も後から行くつもりでした。」



「なるほど、わかりました。では、如月さん、倉庫に着いてからどうしましたか?」



いるかは、記憶の糸をたぐりよせた。



















 授業後、HRと掃除を済ませ、いるかは、第二体育倉庫に来ていた。



ドア前から声をかける。

「誰かいる?」

返事はなかった。



『まだ、来てないみたい。中で待ってようかな』

いるかは、倉庫内に入っていった。



この倉庫は、不要となった体育用具を処分するまでの一時的な保管場所として使われていたため、処狭しといった具合に多くの用具が詰め込まれていた。

そのせいか、いつのまにか明り取りと風通しに為に作られた小窓も塞がれたような格好になり、日中でも電灯が必要なほど暗かった。



いるかは倉庫中央の天井部分に取り付けてある電灯をつけるべく手探りで進んでいったが、あともう少しというところで、なにかにつまづくようにして転んだ。



「いたたたた・・・・」



起き上がろうと床に手をついたその瞬間、何かヌルっとしたものが手に触れた。



『何だろ、水? 雨漏りでもしてんのかな? 雨漏りだったら春海にいって直すように手配してもらわなきゃいけないけど・・』



いるかは、起き上がり、電灯のひもを引っ張る。



電灯の明かりの下に照らし出されたのは、

血の海の中で仰向けに倒れている女の子だった。





「いやぁぁぁーーーー」

手にべっとりとついた真っ赤な血、白目をむいて横たわる少女。

いるかは今、目の前にその光景が広がっているかのような錯覚を覚え、ガタガタと震え出した。



「いるか、落ち着け」

春海はすぐさま、いるかの肩を抱き、落ち着かせようと試みる。

だが、いるかはまるで幼子がいやいやをするように大きく上体を揺らした。



春海は、いるかを頭ごと抱えるように自分の胸元に引き寄せ、

「大丈夫、俺がいるから」

何度も言い聞かせるようにいるかの耳元で囁いた。



「これ以上の尋問は彼女の精神がもちません。申し訳ないですが、もうやめていただきたい」

春海は有無を言わさぬといった態度で佐伯に向かって言い放つ。



『高校生ごときが何を言うか』という思いもあったのだろう、佐伯は「君に何の権限があるというんだ?」と少しムッとした言い方で返した。



「彼女は僕の婚約者です。婚約者の身を心配するのは当然でしょう」

春海は毅然とそしてきっぱり言った。



一触即発といった雰囲気をなだめたのは、浅見刑事局長だった。



「確かにこれ以上彼女の尋問は無理のようだね。佐伯警部とおっしゃたかな、どうだろう、この二人は身元も確かだし、事情聴取は後日彼女が落ち着いてからということでは? 山本君もそれでいいかね?」



「わかりました、ここは浅見さんのお言葉に従いましょう。明日になれば彼女も少しは落ち着くと思いますので、僕たちの方から警察へ伺います」

春海は先ほどより幾分穏やかな調子で答えた。



佐伯も「刑事局長がそうおっしゃるなら・・」

といかにもしぶしぶといった様子で応じた。



春海はいるかの方に向き直ると、

「いるか、ご両親は? 連絡して来てもらうか?」と訊いた。



「ううん、無理。昨日から誰もいないから。二人一緒にヨーロッパに行ってる、外務大臣のお供とか言ってた。」



「じゃあ、六段の家にお前一人なのか? お手伝いさんは?」

「今はみんな通いだから、夜は誰もいない。」



「そっか、じゃあ、俺ん家来るか? 藍おばさんも今は通いだけど、徹がいるし。一人であの家にいるよりはいいだろう?」



「うん、今日、一人で居るのは怖い・・・」

『一緒に居て』いるかの目がそう言っていた。



「では、僕たちはこれで失礼します」

春海は残った面々に軽く頭を下げ、いるかを伴って視聴覚室を出ていった。



後に残された者達は皆、あっけにとられた面持ちで二人が消えていったドアを見つめていた。



最初に口を開いたのは巧巳だった。

「あっは、春海のヤツ、ほんっとにいるかの事となると冷静さを欠くよなぁ」

半ば呆れたように呟いた。



「ホントだよね。いつもは冷静沈着を絵に描いたような奴なのにさ」

玉子も相槌をうつ。



「それより、やっぱ、春海といるかって婚約してたんだ」



「ああ、この春にな」



「巧巳、知ってたの?」



「ああ、春海から聞いた。まっ、双方の親御さん絡みってのも否めないけどな。でもどのみち遅かれ早かれそうなるだろ、あの二人はさ」



少し寂しげな表情で巧巳は答えた。






春海のたくらみ
春海のさしいれ

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