鹿鳴
会 会議室 第一回議事録
第二回議事録
第三回議事録




第一回議事録


春海「えー、次の議題は・・・」
いるか「えーまだあんのー。もうおなかすいちゃったよー」
春海「だまれ。これで最後だ。」
いるか「はやくしてよねー」
一馬「しかしプリントには何も書いてないぞ」
進「そうだな。いったい何を話し合わなきゃならないんだ?」
春海「確かに事前に配っておいたプリントには何も書いてない。
ちょっと記録に残せないようなことなんだ。」
兵衛「おいおい。なんかまずいはなしなのか?」
春海「まあ・・・ちょっとな。」
いるか「なになに、なんか面白そうじゃん!」
春海「お前なー・・・」
進「いいから話せよ。いるかも腹すいたっていってんだし。」
春海「実はこんど鹿鳴会メンバーのオリジナルカクテルを作ることになった。」
一馬「カクテル?」
進「何でまた?」
春海「実は某所に鹿鳴会OBが経営してる
「いるかちゃん応援部」っていうバーがあって、
そこでこんど俺たちにちなんだカクテルを作って売り出そうって話がある。
で、事前に俺たちの好みとか、いろいろ聞いて作りたいだとさ。」
兵衛「俺たちまだ未成年だぜ?」
春海「だから議事録には残せないわけだ。」
進「なるほどな・・・」
いるか「ねーカクテルって何?」
春海「よーするに酒。酒に何かを加えた飲み物。
たいていはウォッカとかジンとか、ラム、ブランデーといった
蒸留酒がベースになって、
そこにリキュールやジュースなんかを加えたもの。
加えるといっても混ぜ方にもいろいろあって・・・」
いるか「ああ、もういいよ。覚えらんないって。
要するになんかオリジナルのお酒なんでしょ。」
春海「まあ・・・そんなとこだな。」
進「俺、酒なんてあんまり知らないぜ?」
一馬「そんなことねーだろ。おまえんち、
居間に立派そうなボトルがいっぱいあんじゃん。」
進「あれは親父のだよ。決まってんだろ。」
一馬「でもたまには付き合って飲んだりしてんだろ?」
進「そりゃ・・・たまには。」
一馬「やっぱりなー。」
進「そー言うお前はどうなんだよ。」
一馬「俺んちは親戚が酒屋だから、日本酒は結構飲んでる。」
進「兵衛は?」
兵衛「俺は・・・そうだな、毎年お袋が梅酒をつけてるよ。
どれでもお前の好きな焼酎選びなさいって言われて、
いろんな銘柄を結構飲んでみたりしてるけど・・・」
進「春海は?お前何気につよそーだよな。」
春海「・・・お前らがそんなに酒飲みだとはしらなかった・・・」
一馬「はははははっ、そーだよなー。
お前タコハイが酒だってことも知らなかったんだっけ?」
春海「悪かったな。」
進「で、どうなんだよ。」
春海「俺は別に・・・正月の屠蘇ぐらい・・・」
一馬「おいおい、そりゃ飲んでるうちにはいらんぜ。」
春海「当たり前だろ。未成年なんだから」
進「いまさらいい子ぶるなよ。なんかあんだろ。」
春海「・・・もらい物の久保田万寿が悪くなりそうだって
藍おばさんが言うんで・・・少し。」
進「ほらみろ」
一馬「その年で万寿の味しめちゃーあとが大変だぜ。」
兵衛「・・・いるかは?」
一馬「お前酒乱っぽいなー」
いるか「なんだよっ、それっ」
春海「いい加減議題に戻ろうぜ。大体見当はつけてあるんだ。」
一馬「ほー。聞かせてもらおうじゃないか」
春海「まず一馬、お前だ。お前が一番簡単に決まった。アラスカだ。」
一馬「アラスカ?」
春海「アイスホッケーやってるお前に合うと思って。
シャルトリューズってフランスのリキュールを使うんだが、
これが緑と黄色とある。
緑のほうがアルコールがきついらしくて、
こっちを使うとグリーン・アラスカって言うらしいが、お前の場合、
やっぱ普通のアラスカだろ。氷のイメージに近いしな。」
一馬「悪くないんじゃないか。」
春海「次は進。
お前はサッカーやってるし、サッカーっていや、
ラテンアメリカっぽいイメージがあるだろ。
だからラムベースがいいと思った。」
進「うちにバカルディならあったな。」
春海「バカルディっていや、カクテルの名前でもある。それでもいいな。」
春海「兵衛、おまえは焼酎を飲むって言ったな。」
兵衛「味見程度だ。」
春海「まあいいだろう。たしかデンマークにアクアヴィットって酒がある。
これはジャガイモの蒸留酒、 言ってみれば焼酎の親戚だ。
これを基にしたらいいんじゃないか。」
兵衛「焼酎のカクテルってないのか?」
春海「俺の調べたとこ、少ないみたいだな。
お湯割とかロックもカクテルっていえないことはないらしいが・・・」
一馬「お前、やけに詳しいな。」
春海「・・・調べたんだよ。このために。」
進「お前のは、どうするんだ?」
春海「俺は照葉樹林にしようかと思ってる。」
兵衛「変わった名前だな、それ。」
一馬「お前は、どっちかって言うと針葉樹林じゃないのか?」
春海「グリーン・ティー・リキュールを使ったやつで・・・」
一馬「緑茶か?渋いな。相変わらず。」
進「・・・いるかは?」
いるか「うーん・・・いちどね・・・」
春海「なんだ?」
いるか「とーちゃんたちに連れられて
どっかのパーティーに行ったことがあるんだけど、
疲れてカウンターみたいなとこに座ってたら
おっちゃんが『何かおつくりしましょうか』って聞いたんだよね。
でさ、なんでもいいよっていったらすごーくおいしいの作ってくれてさぁ・・・」
春海「それ、なんて名前だったんだ?」
いるか「そんなん、覚えてるわけないじゃん。」
春海「でも色とか、味とか、なんか覚えてるだろ。」
いるか「うーん・・・たしかね・・・」
春海「お前、そのとき何着てた?」
いるか「えっ何で?」
春海「いや、バーテンダーってさ、その人のイメージとか、
着てるものからカクテルを選ぶってことが多いらしいから。」
いるか「そのときはね、確か十三参りのとき着た振袖だった。
白地に藤とか牡丹とか、いろんな花が染め出してあって・・・」
一馬「お前が着物?」
いるか「なんだよっ、あたしいがいと似合うんだからねっ!」
進「まあ、親父さんが外交官なら着物ってことも多いだろうな。」
兵衛「そりゃそうか。」
一馬「なるほどねー」
いるか「そーいえば紫っぽい色だった。甘酸っぱくて・・・
なんか上に載ってたな。ふわふわしたのが。」
春海「それ、卵白じゃないか?」
いるか「あっ、そうだ。確かにそうだったかも!」
一馬「おい春海、それだけでなんだかわかるのか?」
春海「うーん・・・たぶん・・・」
進「なんだよ、わかったんなら教えろよ。」
兵衛「そうだそうだ。聞きたいぞ。」
いるか「・・春海?」
春海「それは・・・たぶん・・・撫子ってやつじゃないかな」
進「撫子って花の?大和撫子の?」
兵衛「いるかが?」
一馬「えーーーっ、冗談だろー!!」
いるか「ちょっとっ、みんなっ、ひどー」
春海「まあまあ、お前だって黙っていればちゃんと・・・」
バキッ!
春海「ってー・・・」
いるか「黙っていればってどーいう意味よっ!!!
なによっ、みんなしてっ!」
進「まあ、いいんじゃないか。どうせオリジナルにするんなら
もともとの名前だって変えるんだろ?」
春海「そうなるはずだ。あくまでももとになるものを何か・・・って
ことだったから。」
兵衛「じゃ、今日はこの辺でおひらきにするか。」
一馬「そうだな。」
春海「じゃ、帰るか。」
いるか「あー、おなかぺこぺこ。はやくかえろ!」

後日談: バー「いるかちゃん応援部」にて

「確かにいるかちゃんって、むずかしいねー」
「いろんな面があるからかもね。」
「それはいえる。むちゃくちゃだし破天荒だけど、お嬢さまだし。」
「すごく明るいし前向きだけど、意外と恥ずかしがりやだよね。」
「竹を割ったような性格っていうけど、バンブーはどうかな?」
「うーん・・・あれはどっちかっていうと春海君のイメージかな。
ちょっと大人っぽいし。」
「確かに。さわやかっていう点ではシー・ブリーズはぴったりだね。」
「そうだね。クランベリーの甘酸っぱさって、いるかちゃんらしいかも。」
「グラスホッパーなんかは?甘いし、クリーム系で好きそうな味よね。」
「うん、あのイナゴ色、いるかちゃんならにあいそうかも。」
「うーんとフルーツを盛ったトロピカル系も似合うね。」
「うんうん。ピニャ・コラーダとか、マイ・タイとか。何でもにあいそう。」
「でさ、例の撫子ってのは?」
「あれはね、日本酒がベースのちょっと変わったカクテル。」
「めずらしいの?」
「うん・・・まあね。卵白も使うし、割とちゃんとしたところでないと
飲めないかも。」
「春海くん、よくしってたよねー」
「そうだね。いろいろ調べたらしいね。」
「春海くんはなんていってるの?」
「何が?」
「だから、いるかちゃんをイメージしたカクテルって。」
「それがねー・・・」
「何よ?」
「甘くて、軽くて、すっきりして、淡いきれいな色で、・・・ って
いろいろいうんだけどね。
本当は違うんじゃないかと思うの。」
「つまり?」
「だからね、いるかちゃんそのままのイメージと、
春海くんがいるかちゃんに飲んでほしいものってちょっと違うと思うのよね。
もっとそれらしい名前なんじゃないかって。」
「ははあ、プロポーズとか?」
「ははは、それはさすがにもうちょっと先かもね。でもいろいろあるでしょ。
ラヴァーズ・ドリームとか、マルガリータとか・・・」
「ああ、恋人の名前をつけたっていう?」
「ファム・ファタル、運命の女性っていうのもあるわ。
あと、ちょっと頼みにくいような名前のカクテルって結構あるのよね・・・」
「って・・・それってどうやって頼むのよ。」
「紙に書いて渡すことが多いと思うけど。
まあ、そんな露骨なのわね、好きじゃないと思うわ。」
「・・・結局決まらないじゃない。」
「そうなのよ。それで困っているの。
まあ、あのいるかちゃんだからね。
いろんな人がその人のイメージで飲むのが一番なのかもね。」
「そりゃそうかもね。わたしだったら春のいるかちゃん、夏のいるかちゃん、
秋の、冬の、みんな違うと思うな。」
「それはいいかもね。」
「春はミモザ。あのかわいい花っているかちゃんのイメージに合うと思う。
夏はさわやかに甘酸っぱくシー・ブリーズ。
冬はあったまるミルク味のエッグ・ノッグ。・・・とかね。」
「なるほど。まあ、いるかちゃんですからね。
考えているだけで楽しいけど
決めるわけにはいかないみたいね。」
「そうね。春海くんにもそういっといて。
いるかちゃんはみんなの心の中であまりにも生き生きしていて
イメージだってひとつには決められませんって。」
「わかった。」
「じゃ、水無瀬、またね。」
「またね」

(終わり)


第二回議事録



いるか「ねーねーちょっとききたいんだけどさー」
春海「なんだよ。」
いるか「みんなこのチョコレートどうすんの?」
一馬「食うんだろ、もちろん。」
いるか「そりゃ、いつかは。でもさ、どうやって持って帰るわけ?」
兵衛「去年はたしかダンボールに詰めて修学院の車で自宅まで届けてもらったんだっけな。」
進「そうそう。」
いるか「めんどーだなー」
春海「仕方ないだろ。このまま鹿鳴会本部を菓子ごときに埋もれさせておくわけにはいかん。」
いるか「菓子ごときって・・・手作りのもあるみたいだし、その言い方はないじゃん。」
春海「こんなものは自己満足なんだからいいんだ。」
進「おまえ、さすがにその言い方は女の子に失礼だぜ。向こうが真剣ならこっちもそれなりの態度を示してやらないと。」
春海「そんな必要はない。第一おれは顔も名前も知らない人間に気を使うほど暇じゃない。」
一馬「まーまー二人とも。春海、いるかに負けたからっていらいらすんなよ。」
春海「おれがこんなことを気にしてるとでも?」
一馬「おや、違うのか?」
春海「当たり前だ。」
一馬「じゃあ、気にしてるのは別のことかなぁ・・・」
兵衛「え?別のことって何だ?」
一馬「まあ、言わぬが花っていうかさ。」
いるか「みんな何訳わかんないこといってんの。ともかく、ダンボールがいるよね。あたし、もらってくる。」
春海「あ、おれもいく。」
進「よろしくな。全部で10個もあれば足りるだろ。」

一馬「・・・でさ、やっぱりあげてないと思うか?」
兵衛「誰が?」
一馬「決まってんだろ・・・いるかだよ。」
進「いるかが?え、誰に?」
一馬「おまえ、もしかして欲しいとかおもってた?」
進「い、いや、そんなことはないけどさ。ひょっとしてみんなにくれるかな、なんて思ってたから。」
兵衛「あいつがチョコレートなんか作ってるとこ想像できないなぁ。えらい不器用だからな。たぶん、おれのほうが上手いぜ。」
進「兵衛、おまえ料理なんかできんのか?」
兵衛「いや、まあ、少しはな。これからは男は強いだけじゃだめだって母親が言うんだよな。」
一馬「・・・おまえがエプロンしてるとこ想像しちまった・・・」
兵衛「一馬、おまえも少しはできたほうがいいぜ。何なら今度・・・」
一馬「・・・そのうちな。でさ、やっぱりあげてないと思うんだよな―」
兵衛「春海にか?」
一馬「あぁ。」
兵衛「もしかして、春海の機嫌が悪いのって、そのせいか?」
一馬「そうだろ。意外とわかりやすいとこあるからな、あいつは。」

いるか「ただいま―もらってきたよー」
進「おっ、さんきゅ。」
いるか「みんな一個で足りそうだね。あたしは・・・三個はいるかなァ。」
春海「おれは二個。」
いるか「それにしても、みんなこれどのくらいかけて食べてんの?」
一馬「おれは毎日一個ずつ食って二、三ヶ月ってとこかな。」
兵衛「おれもそんなもんかもな。」
進「おれは・・・夏までかかった。」
いるか「春海は?」
春海「・・・去年のがまだある。」
いるか「ええっ!さすがにまずいじゃん、それ!」
春海「平気だ。このためにアメリカ製の大型冷凍庫がある。」
いるか「・・・・うへぇ」
一馬「なんだかんだ言って結構気を使ってんじゃんか。おれはまたてきとーにあげたり捨てたりしてんじゃないかと思ってたぜ。」
春海「・・・」
いるか「春海甘いもの平気じゃなかったの?」
春海「だからって一年中チョコレートばっか食ってるわけにはいかん。おれはどっちかというと和菓子のほうが好きなんだ。」
進「こいつ親父くさいからなー」
春海「親父くさいとは何だ!日本の伝統的な菓子が好きなだけだ!」
一馬「そーいやおまえ、伝統に弱いよな。」
兵衛「そうだな。水練大会の時だってそんなこといってたしな。」
いるか「ふーん、そうなんだ・・・」
春海「いや、でも、キライじゃないよ。もちろん。」
いるか「え?何が?」
春海「・・・洋菓子の類。」
進「つまり、チョコレートって言いたいわけだよな。」
一馬「おまえってやっぱりすなおじゃないよなぁ、春くん♪」
いるか「みんな何話してんの?それよかこれ詰めんの手伝ってよ。・・・結構な量だなぁ。これなら当分おやつ抜きでも平気かな。まぁ一月くらいは。」
一馬「おまえ・・・そりゃいくらなんでも食いすぎじゃないのか?」
いるか「へーきだよ、このくらい。軽い軽い!」
一馬「まぁ、おまえは特異体質だからな・・・」
いるか「とくいたいしつって何?」
一馬「だから、え―っと、何を食べても腹を下さない全国の少年少女の憧れの的の体質ってことだ。」
いるか「やだなーもー、照れるじゃん!」
一馬「・・・照れるところか?」
兵衛「まあまあ・・・」
春海「詰め終わったぞ。あとは放課後職員室にもっていって暇そうな先生に車を出してもらうだけだ。」
いるか「あ、春海ありがとー」
春海「ったくこの始末で会議の時間がなくなっちまったぜ。」
進「三年生の歓送会のことだよな」
春海「あぁ。実行委員会にてきとーにやらせちまうか。」
一馬「てきとーって・・・おまえ・・・」
春海「いーんだっ!たまには他の奴らにも仕事をさせてやるっ!いっつもいっつもおればっかり・・・」
一馬「どうどう」
春海「コホン。えっと、それじゃあとは三年歓送会実行委員会にまかせるとして・・・」
進「まあ、いいよな。たまには。」
兵衛「いいのか?議事録に残るんだぜ?」
一馬「まあ、いいだろ、こんなのも。」
春海「・・・ってことで会議終了!今回は楽な会議だったな―」
一馬「・・・って何も決めてないじゃんか・・・・」

春海「おい、おわったぞ!はやくしないと5限目が始まるぜっ」
いるか「あっ うんっ」

(終わり)


第三回議事録




春海「今日の議題は・・・」
いるか「ねー、お天気いいし、桜も満開だし、今日の会議外でやらない?」
一馬「花見しながら会議か?」
進「・・・会議になるのか?」
兵衛「なんか風流だなぁ。」
一馬「おまえが風流って言うと・・・なんか・・・」
兵衛「なんだ?」
一馬「いや・・・いいよ。うん。」
春海「まあいいじゃないか。外行こうぜ。」

一馬「・・・あいつ、最近いるかに甘くねぇか?」
進「おれもそんな気がしてた・・・」
兵衛「いいことじゃないか。なあ?」
進「・・まあな。」

いるか「うーん、やっぱりお外はいいねー♪」
春海「気持ちいいよな。」
いるか「やっぱり外にして正解でしょ?」
春海「うん。おまえの言ったとおりだよ。」
いるか「おべんとも外で食べるといっそうおいしい♪」
春海「おまえ、ご飯つぶつけてるそ。」
いるか「え、どこ?」
春海「とってやる・・・ほら。」
いるか「あ、ありが・・・あー!食べるなぁ!」
春海「もう遅い。」
いるか「う〜・・・」
一馬・兵衛・進「・・・」

女生徒A「あ、あの・・・」
いるか「ん?何?」
女生徒B「これ、調理実習で作ったんです。よかったら皆さんで召し上がってください!」
いるか「わ〜三色団子だ!ありがと〜♪ちょうど甘いものがほしかったんだよね〜♪」
春海「ありがとう。」
進「おいしそうだね、いただくよ。」
一馬「へぇ、うまそうだな。」
兵衛「君たち、一年生?」
女生徒A「はっはい!雪組の燈といいます!」
女生徒B「雪組のあらゆきと申します!」
いるか「んまい〜♪」
春海「いるか、そんなに急いで食うな。」
いるか「だっておいしいんだも〜ん♪」
進「ホント、うまいよな。」
一馬「ああ。」
兵衛「団子には・・・やっぱりアレだよな。」
一馬「ちょうど花も盛りだし・・・」
進「確か緋毛氈も倉庫にあったよな。」
いるか「ん?」
春海「野点といくか。」
いるか「それ何?またなんかおいしいものが出るの?」
春海「・・・おまえはそこで待ってろ。」


いるか「おいし〜!ちょっと苦くて、お団子とあうね!」
兵衛「・・・恐れ入ります。」
一馬「こら、大人しくしないか。」
いるか「だって〜おいしかったんだもん・・・」
春海「いいんだ、茶は心で味わうものさ。形にこだわることはない。」
いるか「春海、いいこと言うね!」

伊勢コーチ「・・・松平先生、ちょっと外を・・・」
松平先生「ん?なんだ鹿鳴会の連中じゃないか。なにやっとるんだ?」
伊勢コーチ「野点でしょう。いいですね。」

燈「ご馳走様でした!」
あらゆき「長門先輩のお手前、感動しました!」
いるか「兵衛って何でもできるんだね〜すごいなぁ!」
兵衛「い、いや、それほどでも・・・」
春海「・・・(やや冷たい目線を兵衛に向ける)」
進「と、ところで、今日の議題ってなんだっけ?」
一馬「え、えっと、今度の校内陸上オリンピックについてだよな?」
進「今年もおまえたちが勝ち抜くに決まってるけどさ。な、春海?」
春海「……」
燈「あ、あの、あたしたちそろそろ・・・」
あらゆき「あ、あの、シツレイします。」
いるか「あ、また今度作って・・・って、逃げるみたいに走ってかなくてもいいのに。
ねぇ春海?」
春海「……」

進「ほ、ほら春海、会議に入ろうぜ」
一馬「今年は鹿鳴会決定戦のルールを少し変えなくちゃならないしな。」
兵衛「そうだよ。去年みたいになったら大変だからな。」
いるか「えーやだよー!今年こそ春海を負かすんだからっ!」
春海「……そうはいくか!」
いるか「あたし負けないからね!」
春海「おまえこそ、覚悟しろよ!今年こそ副会長だ!」
いるか「やーだよっ!」

キーンコーン・・・

進「ほら、昼休み終わっちまったじゃないか。」
兵衛「今日も結局何も決まらなかったなぁ。」
一馬「・・・ここんとこ、ずっとこんなだなぁ…」
進・兵衛・一馬「はぁ……(深いため息)」

(終わり)

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