「・・・これでいい?」
「・・・素敵だよ。」
ドレッサーの一番下の引き出しには、とても大切なものが入っていた。
「春海、これを・・・」
いるかは指輪をそっと彼に差し出した。
春海はそれを無言で受け取って、そっと彼女の左の薬指にはめる。
今まで何もはめたことのなかった指が彩られていく。
白くほっそりとした指はこの石の輝きでもって洗練された美しさをそなえた。
きちんと整えられ磨かれた桜色の爪。
ほんの少し色を足した頬。
つややかにふっくらとした唇。
彼女は、なんと美しくなったのだろう。
出会ったころは中性的で、少年とも見間違えるほどだったのに。
小柄で背の低いのは変わらないけれど、
全体的に均整が取れて小ささを感じさせない。
すんなりと手足が伸びて、輪郭はやや細くなって、
花なら七分咲きといったところだろうか。
まだまだきっときれいになる―――
年をとっても、いくつになっても、きっと彼女はもっときれいになっていく。
いつまでも愛らしくいつまでもかわいらしく
いつまでも寄り添って。