over and over






冬はあんまり好きじゃない。

朝ベッドからでるにも勇気がいるし、サッカー部も筋トレ中心になっちゃうし。
それに…

「…はぁ…」

もうすっかり葉の落ちた街路樹が並ぶ通りを
鞄とは別に一枚の紙きれを眺めながら
もう何度もため息をついている。

進路志望のプリント。

こういうのはテストと同じ位苦手だ。
卒業後は大学に進むだろう、特に希望がなければ付属大へ。
不安があるわけではない。
でもこれといった夢があるわけでもない。

春海はこういうのすぐかけるんだろうな。
国立一本だって言ってたし。
玉子はサッカーの強い大学へ、巧巳は野球の道へ、
みんなそれぞれの夢に向かって羽ばたこうとしている。
人生は小さな別れと出会いの繰り返しだと誰かが言っていた。
近い将来、毎日顔を合わせて騒いでいた仲間とも別れの時がくる。
大人になるにつれ、会う機会も段々と減っていずれは
『元気かなぁ…』なんて懐かしむだけになるのだろうか。
日常が違えば、春海も離れていくこともあるかもしれない。
大人になればいろんな出会いもある…





いつのまにか春海の所に来ていた。
心のどこかで彼にこんな自分を否定してもらいたいと思っていたのかもしれない。
でも急に訪ねるのはためらわれる。

「いるかちゃん?」

振り返ると、徹が立っていた。

「今来たんでしょう。どうしたの。入らないの?」

徹に押され玄関のドアを入る。そのままで徹は兄を呼びにいった。

「どうした?」

部屋に招き、のぞき込む春海の声は優しい。
泣きたくなる程に。
彼の前ではいつものあたしでいたい。
明るくて、元気でまっすぐな如月いるかでいたい。
「……」
なにか言わなくちゃ。
いつものように笑って。
はやく…




ふいに体が傾く。
彼の手が優しくあたしを包む。

「…大丈夫だよ…」

あぁ…わかってるんだ。
あたしが不安がってること。
無理して笑うことなんかないんだ。
素直な気持ちでいても、春海はちゃんと受け止めてくれる。

「…ずっと…そばにいたい」

心からそう思った。
これからも不安になることもあるだろう。
それは春海も。
その度に乗り越えていこう。
二人なら大丈夫。
この腕の暖かさを忘れずに、この人を愛していこう。

それがあたしの夢。


★ANOTHER SECRET OUENBU★